ローラーガールについての一考察 木之本さくらの辛い旅路と執事最強伝説
みんなさくらちゃんのことをロリロリ言わないで下さいよぉ。
さくらちゃんは、もうそれだけではにゃ〜んなんですから。
あぁ、さくらちゃん。
超絶的にかわいすぎて僕はもう……(全壊)
(さくら萌え萌え独立混成旅団の掲示板より抜粋)
小学5年生の彼女は、全世界1000万人のお兄ちゃん達の妹だった。様々な倒錯的人間関係に巻き込まれながらも無汚のはにゃ〜ん顔を見せ続けた彼女が、この先に待ち受けるあまりにも過酷な運命を知るはずもなかった。
第1章 『カードキャプターさくら』 その魅力について
1.クロウカード編
『CCさくら』前半部の強引な牽引力になったファクターを、その倒錯的な人間関係に求めることが出来るだろう。とりわけ目立つのが、さくらの親友・知世の“偏執狂的”な性格である。怪しげな能力をさくらが所持していることを公にばらすと脅迫し、執拗にさくらにコスプレを迫りそれを激写する彼女は、あまりにも魅惑的であった。
「さくらちゃん、超絶かわいすぎますわ」
知世のこの台詞は、多くの人々の理性を破壊し尽くしたさくらワールドにおける原初の象徴なのである。
#61 「さくらとカードとプレゼント」
対人関係の捻れは、他にも各所に見ることが出来る。具体的に考察してみよう。
兄・桃矢の妹に対する抑圧的無意識
桃矢は、妹のさくらがかわいくてかわいくてしょうがないというフロイト的な意味でのコンプレックスにさいなまれる高校生である。しかし彼は、その感情を悟られたくはないがゆえにさくらを時あるごとにいぢめてしまう。彼の歪曲された愛情表現は、『海原雄山研究』で言及したように、過剰人情型キャラクター特有のものであり、われわれの心をつかんではなさない。時折我慢できなくて、さくらに対する愛情を暴発させてしまう(頭をなでるといった形を取ることが多い)所なども素晴らしい。
#61 「さくらとカードとプレゼント」
桃矢×雪兎 そのあまりにも露骨な表現
雪兎は、超絶的にかわいいさくらちゃんよりも桃矢を選び、さくらちゃんを泣かせた極悪人であるのだが、この二人のホモセクシャルな関係は、あまりにも一部の層を狙いすぎたがゆえに、何となくあざとらしい感じがする。しかし、そのあざとらしさがさくら世界の変質性に大いに貢献していることもまた事実である。
#65 「さくらと雪兎と消えゆく力」
大道寺園美の世代を越えて持続する同性愛的感情
知世の母親・園美は、さくらの母親に熱烈な愛情を抱いていた。やがてその感情は、さくらに対する愛情とさくらの父・藤隆に対する過度の嫌悪感へと移行することになる。ここで注目したいのは、自分の愛情の対象物に近寄る男に対して敵愾心を持ってしまう母親とは対照的な知世の度量の深さである。『さくら』後半おいてさくらにベタ惚れになってしまう小狼。知世は彼とさくらとの恋愛が成就するように何かと画策をする。彼に対して示した知世の寛大な態度には、教え子を見守る教官の熱い視線に共通する物がある。
#11 「さくらと知世の大きなお家」
雪兎に一目惚れする小狼
小狼が初めての出会いの時に雪兎に示した極端な愛情表現は、視聴者に深い戦慄を与えた。小狼は雪兎を見るなり腰を抜かし這々の体で逃げ出してしまったのである。
#10 「さくらと花の運動会」
このような倒錯的関係は、第35話『さくらのすてきなクリスマス』において典型的に見ることができる。
あこがれの雪兎と遊園地でデートするさくら。彼女はそこで小狼とバイト中の桃矢に出くわす(桃矢はさくらが遠出するたびに、心配のあまりバイトと称してさくらにつきまとう)。雪兎に恋慕する小狼は、極度の緊張状態に陥る。
#35 「さくらとすてきなクリスマス」
同時にさくらを意識し始めている小狼は、彼女を見ても顔を赤くしてしまう。
同上
その様子を見た桃矢は、「この小僧」と嫉妬の炎を燃やす。
同上
さくらワールドの倒錯傾向は、ここにおいて頂点に達したのである。