二〇〇三年六月

2003/06/01

Eさんは演出になって変わってしまった。制作時代のあの優しいEさんはどこかに消えてしまい、今ではすっかり演出家の顔をしている。IやOは泣きそうな顔でそんなことを云う。

2003/06/02

松屋のカレーは薄くまずい。

2003/06/03

腐食した飯の味と腐った納豆のそれは似ているとO。

2003/06/04

Kが、味覚の上での快楽を其処から獲得するに多大な困難が視覚上想像される気味の悪い麩菓子を、それが大変なる好ましい味覚であることを予感させる様な凄まじく勢いの良い身体動作で、咀嚼消化している様を見る。

2003/06/05

家に帰れない。

2003/06/06

カレーを喰った。四時間後に又カレーが喰いたくなってコンビニに行ったら売り切れだった。

2003/06/07

Kは昼下がりの東工大のキャンパスでは東南アジアからの留学生に交じりながらバレーボールに情熱を傾けた。

2003/06/08

明日から、また家に帰れなくなる。

2003/06/09

眠たい。

2003/06/10

眠い。

2003/06/11

編集室で演出が高いびきを放つ。

2003/06/12

演出しね。

2003/06/13

朝にチャーハンを食った。昼にチャーハンを食った。夜にチャーハンを食った。

2003/06/14

Oの足臭がカレーの臭いと混合した。

2003/06/15

演出家が焼きそばを食って寝てしまった。

2003/06/16

起きて仕事してほしい。

2003/06/17

シマックの『中継ステーション』を読み終える。全盲聴覚障害なかわゆい小娘など出てきて喜ぶが、おやぢの話に終始してどうにもうまくいかず。先月読んだ『華氏451度』にも白痴の少女が到来して心ときめいたのだが、交通事故で途中退場となり無念であった。

2003/06/18

篠田先生はやっぱりずっこけたらしい。予想に違わない人だ。

2003/06/19

己より三ヶ月若いのに監督になり遂せた社内の演出家にたいするIの怨念がすさまじ。

2003/06/20

明日納品。

2003/06/21

おわり。

2003/06/22

「アレだけ鬱なのだからきっと素晴らしい力量の持ち主に違いない」と云う根拠のない期待を微塵にした相手とぶち当たったKに同情する。

2003/06/23

夜型の生活から朝に起きて夜に寝る会社員の様な生活へ移行すると世界が耀く。

2003/06/24

『軍歌』(二枚組)を聴きながら伝票チェック。残念なことに戦後録音である。

2003/06/25

作られうる物語はライターの実人生を越えることはない...

2003/06/26

自己の記録を残さないことに美意識を見出す伝統的な価値観も存在しないことはない。

2003/06/27

異動になったので、荷物の整理などをして一日を潰す。

2003/06/28

Iが「E君が遠くへ行ってしまった」と相変わらず嘆く。

2003/06/29

インドの物乞いに不具者が多いのは、物乞いギルドの親方があらかじめ斬っちゃからと学生時代に上島竜兵似の教師から教わった。

2003/06/30

一生における覚醒時間は遍く人々に対して一定であり、とりあえず16h(起きている時間)×80年(寿命)で467200時間と仮定しよう。これが平均5時間睡眠になると約67歳、4時間睡眠になると約64歳、3時間で61歳、2時間で58歳である。


<来月

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第二稿: 2019.03.26