◇2003/01/01
元旦に、『まほろまてぃっく』を五時間にわたり鑑賞した。
かつて、同僚の埼玉人Hは「まほろさんと一緒にお風呂に入りたい」と告白した。
わたしは撫で撫でされたかった。
◇2003/01/02
まほろさんはこの世にいない。明日も早い。わたしは眠る。
◇2003/01/03
みなじりさま、大槻さま、今日はたいへん有り難うございました。ビデオは帰京後に拝見させていただきます...それから十五年の歳月が流れた。未見である。
で、帰宅して、新春ドラマスペシャル『秋刀魚の味』を鑑賞した。棒読み台詞の律儀な展開がパロディにしか見えず笑った。
◇2003/01/04
『秋刀魚の味』
娘の路子を嫁にやった晩、平山は胸に空洞の広がる様な心地にあった。茶の間を侵す寂寥の感に耐えられなくなった彼は、先程からテレビモニターに熱を帯びた顔面を付着させている息子の和夫に声を掛けた。
「ギャルゲーかい?」
和夫は煩わしそうに、短い返答を吐いた。
「ギャルゲーだよ」
「トゥハートかい?」
「トゥハートだよ」
「あかりかい?」
「マルチだよ」
未だ冷め止まぬ酔いに身を任せながら、平山は「フィーリングハート」をゆるりと口ずさんだ。それはとても明るく哀しい音色だった。
◇2003/01/05
あの時、同僚のOは、いたく切迫した表情で、後輩のSに話していた。
「キミ、頼むからドジを踏んで怒られないで呉れヨ。もう人が怒られるのを見るのはたくさんなんだヨ」
彼の目には光が宿っている様に見受けられた。
「別にキミの事を思って云っているわけぢゃないのだヨ。ただ、怒られる風景を見るのがとても不快なんだヨ」
立ち去ろうとするSの背中に目を遣りながら、Oはポツリとつぶやいた。
「幸せって何だろうネ?」
◇2003/01/06
昼頃、空を見上げたOは、その澄んだ青さと高さに愕いた。
「ボクは思ったネ」
彼は少し笑っていった。
「空が何時もこんなに蒼かったら、きっとボクらは幸せだったに違いないネ」
◇2003/01/07
Oは此処十年ほどある疑念に囚われていた。
「ボクみたいにかっちょいい男も珍しいというのに、どうして未だに独り者なのかネ? 人類の大いなる不思議だヨ」
返答に窮するわたしに一瞥も呉れず、Oは恍惚と誰にともなくいった。
「世界はいつまでボクを放って置く気なのかナ?」
◇2003/01/08
昨年の暮れ、海上保安庁を訪れた際にわたしがもらってきた感冒は、Sを経由してOに感染した。
「どうしてからだがこんなに熱いのかネ?」と火照らせた顔で自問したOは、「ふっ…」と気障に発声すると、自身の問いに自答した。
「それは、ボクが熱い男だからなんだネ」
◇2003/01/09
OがHの傍らを通り過ぎたとき、Hの足臭が自分のそれにたいへん似通ってきたことに気づいたOは、小さな悦びが胸の内から沸き上がるのを否定できなかった。
◇2003/01/10
Oはいった。
「あの晩、エレベーターから降りてきたときのキミは、童女誘拐殺人魔のような顔をしていたから、ボクは大いに引いたヨ」
◇2003/01/11
「ボクの生まれ育った新潟県新津市は、それはもう素晴らしい街だったよ」
Oは、喜々として故郷のことを回想した。
「油田の櫓が何処までも広がっていてネ。街は活気づいていたヨ」
◇2003/01/12
Kは悪食だった。蜜柑十個を喰った後、カップ麺をふたつ平らげた。
◇2003/01/13
O 今日の語録
「解っていたんだヨ。本当に友だちと呼ぶことのできる人間なんて、この世にいないって事は」
◇2003/01/14
Sが「邪魔だなあ」とぼやきながら机を片づけていたとき、Oは「邪魔なのはキミさ」といった。
◇2003/01/15
Oはいった。
「正月にカード使い過ぎちゃってね。首が回らないヨ」
◇2003/01/16
Oはいった。
「女性は良いよネ、女性は」
◇2003/01/17
Oはいった。
「待っている人も居ないのでネ、帰っても意味無いよネ」
◇2003/01/18
Oはいった。
「買っておいたモヤシが腐ってしまうからネ、今日は早く帰るんだヨ」
◇2003/01/19
Oのもとにカード会社から夥しい便りが届いた。
◇2003/01/20
Oはいった。
「冷蔵庫の中身を腐らせるなんてもうたくさんなんだヨ。あの肉が腐っていたなんて、思いもよらなかったよ。思いっきり食べちゃったヨ」
◇2003/01/21
総菜の唐揚げが異様に分厚い衣に覆われていたことについて、Oは不平をいった。
◇2003/01/22
Oは高揚していた。
「覚えてい〜ますぅ〜か〜♪ 手と手が触〜れあったとき〜♪ ――イイネ、イイネ。『手と手が触れ合う』のだヨ。きゃあああぁぁぁ〜〜〜」
◇2003/01/23
Oは給湯所のタオルで顔を拭いたKを叱責した。君の雑菌が感染すると。
◇2003/01/24
元ドカタであるOは懐かしむ。新聞紙の暖かさを。
◇2003/01/25
Oは新年早々、カードでコートを買った。
◇2003/01/26
Oはいった。
「聞こえないし、何も見えない」
◇2003/01/27
Oは回想する。雪祭りで泥だらけの雪像を見たときの落胆を。
◇2003/01/28
幼少のOは見ず知らずの若い女性にいきなり写真を撮られた。その夏祭りの思い出。
◇2003/01/29
ペヤングお好み焼き風焼きそばを喰って、「まずい」とOはいった。
◇2003/01/30
「キミの呉れたペヤングお好み焼き風焼きそば不味かったヨ」
OはTにいった。
◇2003/01/31
「ボクは大きいおねいさんが大好きだ。ココロもカラダもネ」